リモートワークでチームの仕事の進捗を共有 シンプルタスク管理ツールの使い方
はじめに
パンデミック以降、私たちの働き方は大きく変化し、リモートワークが普及しました。場所を選ばずに働けるようになった一方で、チームのメンバーが離れて仕事をする中で、「今、誰が何をしているのか」「プロジェクト全体の進捗はどうなっているのか」が見えにくくなり、チーム連携に課題を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
これまでのオフィスワークでは、隣席の同僚に気軽に話しかけたり、ホワイトボードでタスクを確認したりすることで、自然とチームの状況を把握できていたかもしれません。しかし、リモートワーク環境では、意図的に情報共有の仕組みを作らないと、こうした「見える化」が難しくなります。
この課題を解決し、リモートワークでもチームの仕事の進捗をスムーズに共有するための有効な手段の一つが「タスク管理ツール」の活用です。様々なツールが存在しますが、ここではデジタルツールに不慣れな方にも分かりやすい、シンプルで直感的に使えるタスク管理ツールの基本的な考え方と活用方法をご紹介します。
この記事を通して、タスク管理ツールがどのようにチームの連携を助け、仕事の効率を高めるのか、そしてどのように使い始めれば良いのかについて、ご理解いただけることを目指します。
なぜリモートワークでタスク管理ツールが必要なのか
リモートワーク環境では、対面での立ち話や、偶然の会話から得られる情報が減ります。それぞれのメンバーが個別の場所で作業するため、意識的に情報を共有しないと、チーム全体の状況把握が難しくなります。
- 個々の状況が見えにくい: メンバーが今どのタスクに取り組んでいるのか、何に困っているのかが分かりづらくなります。これにより、サポートが必要なメンバーへの対応が遅れたり、重複した作業が発生したりする可能性があります。
- 全体の進捗が把握しにくい: プロジェクトや業務全体の進捗状況を一覧で確認するのが難しくなります。どのタスクが遅れているのか、次のステップに進むために誰の作業を待つ必要があるのかといった「ボトルネック」(全体の流れを滞らせている箇所)が見えにくくなります。
- 情報伝達の非効率化: 状況確認のために逐一チャットやメールで連絡する必要が生じ、コミュニケーションコストが増加する可能性があります。
タスク管理ツールは、これらの課題に対して、チームの仕事の状況を「見える化」することで解決策を提供します。
シンプルなタスク管理ツールの基本的な考え方
タスク管理ツールには様々な種類がありますが、初心者の方におすすめなのは、視覚的に分かりやすく、直感的に操作できるシンプルなツールです。多くのシンプルなツールは、「かんばん方式」という考え方を採用しています。
かんばん方式とは、タスク一つひとつを「カード」に見立て、そのカードを「未着手(ToDo)」「進行中(Doing)」「完了(Done)」といったステータス別の「リスト(列)」間で移動させていくことで、タスクの状況を管理する方法です。
ツールの基本的な機能としては、主に以下のようなものがあります。
- タスクの作成: やるべきことを「タスク」として登録します。タスク名、担当者、期限などを設定できます。
- ステータス管理: タスクが現在どの段階にあるか(例: 未着手、進行中、完了、確認待ちなど)を示します。カードをリスト間で移動させて表現することが多いです。
- コメント機能: タスクに関する進捗報告や質問、相談などをタスクごとに書き込むことができます。
- ファイル添付: タスクに関連する資料や書類を添付して共有できます。
- 全体像の把握: チーム全体のタスクやプロジェクトの進捗状況を一覧で確認できます。
これらの機能を使うことで、チーム全員が同じ場所(ツール上)でタスクの状況を確認・更新できるようになり、誰が何をしているか、何が進んでいて何が止まっているのかが、一目で分かるようになります。
シンプルなタスク管理ツールの活用ステップ
ここでは、架空のシンプルなタスク管理ツールを想定し、チームで使い始めるための一般的なステップをご紹介します。多くのツールで共通する考え方ですので、お手元のツールや、これから選ぶツールを操作する際の参考にしてください。
ステップ1: チームで使う「ボード」を作成する
ツール上で、あなたの部署や担当しているプロジェクトなど、タスクを管理したい単位で「ボード」や「プロジェクト」と呼ばれる単位を作成します。これが、チームのメンバーがタスクを共有する「場所」になります。
ステップ2: 業務を「タスク」に分解して登録する
部署の定型業務や、現在進行中のプロジェクトに必要な作業を、一つひとつの「タスク」としてボードに登録していきます。例えば、「〇〇会議の議事録作成」「来月の△△イベント準備」「週次の報告書提出」といった具体的な作業項目をタスクとします。
ステップ3: 各タスクに「担当者」と「期限」を設定する
登録したタスクに、誰がそのタスクを担当するのかを割り当てます。また、いつまでに完了させる必要があるのか「期限」を設定します。これにより、誰が何をいつまでにやるべきかが明確になります。
ステップ4: タスクの「ステータス」を更新する
タスクの進捗に合わせて、そのタスクのステータスを変更します。かんばん方式のツールであれば、「未着手」のリストから「進行中」のリストへ、作業が終わったら「完了」のリストへ、といった具合にタスクのカードを移動させます。これにより、タスクの現状が視覚的に分かります。
ステップ5: タスクごとに「コメント」で状況を共有する
タスクについて不明な点がある場合や、進捗を報告したい場合は、そのタスクの「コメント」欄を活用します。これにより、タスクに関するやり取りが全てそのタスクに紐づけられて記録され、後から経緯を確認しやすくなります。他のメンバーもコメントを見ることで、タスクの詳細な状況を把握できます。
これらのステップをチーム全員で実践することで、オフライン時のような「見える化」を実現し、リモートワークでもスムーズなチーム連携を目指すことができます。
ツール導入・運用を成功させるためのポイント
新しいツールを導入し、チームに定着させるには、いくつかのポイントがあります。
- まずは小さく始める: 全社一斉導入ではなく、まずはあなたの部署や特定のプロジェクトなど、小さな範囲で試験的に使ってみることをお勧めします。これにより、チームに合った使い方を見つけたり、課題を早期に発見したりできます。
- 簡単なルールを決める: タスクの登録粒度(どのくらい細かく分けるか)、ステータスの定義(「進行中」とは具体的にどういう状態か)、タスクの更新頻度など、最低限の共通ルールをチームで決めておくと、混乱を防げます。
- 全員が使う習慣をつける: ツールはチーム全員が使ってこそ効果を発揮します。リーダーである方が率先してツールを活用し、定期的にツールの状況を確認する時間を持つなど、チーム全体で使う意識を高める働きかけが重要です。
- 完璧を目指さず、まずは使ってみる: 最初から全ての機能を使いこなそうとしたり、細部まで完璧な運用ルールを決めたりする必要はありません。まずは必要最低限の機能で使い始め、少しずつ慣れていくのが現実的です。
- セキュリティについて確認する: 重要な業務情報を取り扱う可能性もあるため、利用を検討しているツールが信頼できる提供元のものであるか、どのようなセキュリティ対策が取られているか(データの暗号化など)を、ツールの公式サイトなどで簡単に確認しておくと安心です。また、基本的なことですが、ツールのログインパスワードを使い回さず、推測されにくいものに設定することも大切です。
まとめ
リモートワークにおけるチームのタスク・進捗管理は、オフィスワークとは異なる難しさがありますが、タスク管理ツールを活用することで、この課題を大きく改善できます。チームの仕事を見える化し、誰が何をしているかを共有することは、リモートワークでの連携を強化し、生産性を向上させるために非常に有効です。
最初の一歩として、まずはシンプルで使いやすいツールを選び、この記事でご紹介したような基本的なステップで始めてみてはいかがでしょうか。新しいツールに慣れるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、チームで協力しながら進めることで、きっとリモートワークでの働き方をよりスムーズで効率的なものへとアップデートできるはずです。