リモートワークで進める印刷業務の削減 デジタル化のステップとメリット
リモートワークにおける印刷業務の課題
パンデミックを経てリモートワークが広がる中で、オフィスで当たり前に行っていた業務の中には、デジタル環境では難しさが出てきたものもあります。その一つに「印刷」が挙げられます。
例えば、 * 取引先から届いた書類を印刷して内容を確認し、社内で回覧する。 * 会議の資料を人数分印刷して配布する。 * 社内申請書を印刷して上司に押印をもらう。
といった業務は、オフィスにいれば比較的容易に行えましたが、自宅など離れた場所で働くリモートワーク環境では、プリンターがない、書類を物理的に持ち運べない、といった理由からスムーズに進めることが困難になる場合があります。
このような印刷を伴う業務の課題を解決し、リモートワークをより円滑に進めるためには、業務のデジタル化が有効な手段となります。
印刷業務のデジタル化がもたらすメリット
印刷業務をデジタル化することには、リモートワークへの対応だけでなく、様々なメリットがあります。
- コスト削減: 用紙代、インク代、プリンターの維持費といった直接的なコストに加え、印刷、仕分け、配布にかかる時間という見えないコストも削減できます。
- 業務効率化: 書類の検索や共有が容易になり、必要な情報にすぐにアクセスできるようになります。承認フローもオンライン化することで、場所を選ばずに迅速に進めることが可能です。
- 情報共有の円滑化: 最新の情報をリアルタイムでチーム全体に共有しやすくなります。物理的な書類のように紛失するリスクも低減されます。
- セキュリティ向上: 印刷物の置き忘れや紛失による情報漏洩リスクを減らすことができます。アクセス権限を適切に設定することで、機密情報の安全な管理が実現できます。
- 環境負荷の低減: 用紙の使用量を減らすことは、環境保護にも貢献します。
これらのメリットは、働く場所にかかわらず享受できるものですが、特にリモートワーク環境においては、業務の中断や遅延を防ぎ、生産性を維持・向上させる上で非常に重要となります。
印刷業務デジタル化へのステップ
では、実際に印刷業務のデジタル化はどのように進めれば良いのでしょうか。デジタルツールに不慣れな方でも取り組みやすい基本的なステップをご紹介します。
ステップ1：現状の印刷業務を洗い出す
まずは、どのような書類を、どのような目的で印刷しているのか、業務ごとにリストアップすることから始めます。 例えば、「A社からの請求書確認（経理部）」「定例会議の議事録配布（営業部）」「交通費精算の申請・承認（全社共通）」など、具体的な業務とそれに紐づく印刷行為を書き出してみます。 この段階で、その印刷が本当に必要か、デジタルで代替できないかを検討する視点を持つことが大切です。
ステップ2：デジタル化に適した業務とツール候補の検討
洗い出した業務の中から、比較的デジタル化しやすいものを選びます。例えば、単なる資料の共有や回覧、確認のための印刷などは、デジタルツールで代替しやすい傾向があります。
次に、それぞれの業務に適したデジタルツールを検討します。主なツールの種類と活用例をいくつかご紹介します。
- オンラインストレージ:
- これは、インターネット上に書類やファイルを保管・共有できるサービスです。「クラウドストレージ」とも呼ばれます。
- 文書ファイルをそこにアップロードすれば、チームのメンバーが必要な時にいつでもアクセスできるようになります。会議資料や社内規定の共有、回覧資料などに適しています。
- 代表的なサービスには、Google Drive、Microsoft OneDrive、Dropboxなどがあります。これらはインターネットにつながっていれば、パソコンだけでなくスマートフォンなどからも利用できます。
- 電子署名ツール:
- これは、契約書などの重要な書類に、パソコン上で「署名」や「押印」の代わりとなる電子的な証明を行うためのツールです。
- 書類を印刷して押印し、スキャンして送付する、といった手間を省き、契約締結や各種申請の承認プロセスをオンラインで完結できます。法的な効力についても、一定の要件を満たせば認められるものが増えています。
- 代表的なサービスには、DocuSignやAdobe Signなどがあります。
- ペーパーレス会議システム:
- これは、会議資料を参加者全員が手元の端末（タブレットやPC）で共有・閲覧するためのシステムです。
- 事前に資料をアップロードしておけば、会議中に紙の資料を配る必要がなくなります。資料への書き込み機能を備えたものもあります。
これらのツールは、個別の業務だけでなく、複数の業務で共通して活用できる場合が多いです。自社の業務内容と照らし合わせながら、どのツールが適しているか検討します。
ステップ3：小規模なトライアル実施
いきなり全ての業務をデジタル化するのは難しい場合もあります。まずは、影響範囲の少ない特定の部署や業務で、選定したツールを試験的に導入してみることをお勧めします。 実際に使ってみることで、ツールの操作性やメリット、課題が見えてきます。想定していなかった問題点や、現場からの要望なども把握することができます。
ステップ4：全社（あるいは部署）への展開と定着
トライアルで得られた知見をもとに、課題を改善し、本格的な展開に進みます。 導入にあたっては、ツールの使い方に関する研修会を実施したり、操作マニュアルを作成したりするなど、社員が抵抗なくツールを使えるようにサポートすることが重要です。 また、なぜ印刷業務をデジタル化するのか、その目的やメリットを丁寧に伝えることで、社員の理解と協力を得やすくなります。新しいやり方を根付かせるためには、継続的な働きかけと、困った時に相談できる体制づくりが大切です。
デジタル化を進める上での注意点
印刷業務のデジタル化は多くのメリットがありますが、いくつか注意しておくべき点があります。
- 情報セキュリティ: 書類をオンラインで扱うようになるため、情報の漏洩や不正アクセスに対する対策がより重要になります。ツールが提供するセキュリティ機能（アクセス制限、暗号化など）を適切に設定し、従業員への情報セキュリティ教育も併せて行う必要があります。
- 移行期間: これまでの紙ベースの運用から、いきなり全てをデジタルに切り替えるのは現実的ではない場合があります。一定期間は紙とデジタルの両方で運用する「ハイブリッド」な期間を設けるなど、スムーズな移行計画を立てることが望ましいです。
- 全ての業務がデジタル化できるわけではない: 法令や取引先の都合により、どうしても紙媒体での対応が必要な業務も存在します。無理に全てをデジタル化しようとするのではなく、可能な範囲で進める現実的なアプローチが重要です。
まとめ
リモートワークの定着は、従来の働き方を見直し、デジタルツールの活用を進める良い機会となります。印刷業務のデジタル化は、一見地味に思えるかもしれませんが、コスト削減、効率向上、セキュリティ強化といった多くのメリットをもたらし、より快適で生産的なリモートワーク環境の実現に繋がります。
最初から全てを完璧に行おうとする必要はありません。まずは小さな一歩として、特定の業務からデジタル化を始めてみてはいかがでしょうか。適切なツールを選び、段階的に導入を進めることで、デジタルツールに不慣れな方でも、着実に印刷業務の削減と業務効率化を実現することができるでしょう。