リモートワークで部署の知見を共有する方法 ナレッジ管理ツールの基本
リモートワークで散逸しがちな部署の知見
パンデミック以降、多くの組織でリモートワークが導入され、働き方が大きく変化しました。オフィスで顔を合わせることが減ったことで、部署内のメンバー間で気軽に質問したり、先輩の仕事の進め方を見たりといった機会が少なくなったと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような状況下では、個人の持つ知識や経験、つまり「知見」や「ノウハウ」が部署内で十分に共有されず、情報が特定の担当者に偏ってしまう、いわゆる「属人化」が進む懸念があります。また、過去の業務で得られた valuable (価値のある) な情報が埋もれてしまい、後から探すのに時間がかかったり、最悪の場合は失われてしまったりすることもあります。
リモートワーク環境下で部署全体の生産性を維持・向上させるためには、これらの散逸しがちな情報や知見を組織の財産として蓄積し、いつでも誰でも必要な情報にアクセスできる仕組みを作ることが重要になります。
ナレッジ管理とは何か?
ここで役立つのが「ナレッジ管理」という考え方です。ナレッジ管理とは、従業員一人ひとりが持っている知識、経験、ノウハウといったものを組織全体で共有し、活用していくための取り組み全般を指します。具体的には、業務の進め方、顧客からのよくある質問と回答、過去の成功事例や失敗事例、社内システムの使い方など、組織の活動に必要なあらゆる情報が含まれます。
オフィスワーク中心だった頃は、口頭での引き継ぎや、紙のファイル、個人のPC内データなどで管理されることが一般的でした。しかし、リモートワークでは物理的に離れているため、これらの伝統的な方法だけでは情報の共有が難しくなります。そこで、デジタルツールを使ったナレッジ管理が不可欠となるのです。
ナレッジ管理ツールの役割と主な機能
ナレッジ管理ツールは、部署やチームが持つ情報や知見を一箇所に集約し、整理・共有・活用を助けるためのデジタルツールです。様々な種類のツールがありますが、初心者の方が知っておくと役立つ主な機能をご紹介します。
- 情報の登録と整理
- テキストだけでなく、画像やPDF、動画などの様々な形式のファイルを登録できます。
- 部署のルールや業務手順、製品情報、よくある質問(FAQ)など、情報の種類ごとに分類したり、関連する情報同士をリンクさせたりして、探しやすく整理できます。
- 強力な検索機能
- ツールに登録された情報をキーワードで素早く検索できます。ファイルの中身まで検索できるツールもあります。必要な情報にすぐにたどり着けることは、リモートワークでの業務効率に大きく影響します。
- 履歴管理と更新機能
- 情報がいつ誰によって更新されたかの履歴が残るため、常に最新の情報にアクセスできます。古い情報を新しい情報で上書きしたり、不要になった情報をアーカイブしたりする機能もあります。
- アクセス権限設定
- 誰がどの情報を見たり編集したりできるかを設定できます。部署内のみで共有する情報、全社に公開する情報など、情報の性質に応じた適切な公開範囲を設定することで、セキュリティを保ちつつ必要な人に情報を届けられます。
- 共同編集機能
- 複数人で一つのドキュメントや情報ページを同時に編集できる機能を持つツールもあります。これにより、部署内で協力してマニュアルを作成したり、情報をアップデートしたりする作業が効率化されます。
ナレッジ管理ツールは、単にファイルを保管するオンラインストレージとは異なり、「情報を整理し、検索しやすくし、組織全体の知恵として活用する」ことに重点を置いたツールと言えます。
初めてのナレッジ管理ツール活用:小さく始めるステップ
「新しいツールを導入するのは大変そうだ」「何から始めたら良いか分からない」と感じるかもしれません。ナレッジ管理ツールの導入・活用は、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは部署内の小さな範囲から、試してみてはいかがでしょうか。
- 共有したい情報を決める
- まずは「部署内でよく質問されること」「定型的な業務の基本的な流れ」「よく使う社内システムの操作方法」など、ご自身の部署で「これがあれば皆が助かる」と思う情報からリストアップしてみましょう。議事録や過去の重要なメールなども対象になります。
- 情報をまとめて登録してみる
- リストアップした情報をツールに登録していきます。最初はWordやExcelで作成したファイルをそのままアップロードしたり、簡単な文章でまとめてみたりするだけでも構いません。
- 簡単なルールを作る
- 「この種類の情報はここに登録する」「登録する際はタイトルに分かりやすいキーワードを入れる」といった、簡単なルールを部署内で共有します。全員が同じルールで登録することで、情報が整理されやすくなります。
- まずは自分たちで使ってみる
- 登録した情報を、実際に部署内のメンバーで検索したり、参照したりして使ってみます。「もっとこうすれば分かりやすい」「この情報も追加したい」といった改善点が見つかるはずです。
- 少しずつ共有範囲を広げる、情報を増やす
- 使い慣れてきたら、共有する情報の種類を増やしたり、他の部署と連携して情報共有の範囲を広げたりすることも考えられます。
焦らず、部署のペースに合わせてステップを踏むことが成功の鍵となります。
セキュリティと利用上の注意点
ナレッジ管理ツールで重要な情報を扱う際は、セキュリティについても配慮が必要です。
- アクセス権限の確認: 部署外に見られてはいけない情報は、必ず適切なアクセス権限を設定してください。
- 情報の正確性と更新: 登録されている情報が常に最新であるかを確認し、古い情報は定期的に更新またはアーカイブするようにします。誤った情報が共有されると混乱を招く可能性があります。
- 利用ルールの明確化: 誰が、どのような情報を、どのように登録・更新するのか、部署内で明確なルールを定めておくことで、ツールの適切な運用につながります。
まとめ
リモートワークが進む中で、部署内の情報や知見を効果的に共有することは、チームの連携を強化し、業務効率を高めるために不可欠です。ナレッジ管理ツールは、これらの情報を一箇所に集約し、誰もが必要な時にアクセスできる環境を整備する強力な味方となります。
最初の一歩は、部署内で共有したい小さな情報からツールに登録してみることです。そして、実際に使ってみながら、少しずつ活用範囲を広げていくのが現実的なアプローチと言えます。ナレッジ管理ツールを上手に活用し、リモートワーク時代の「働く」をさらにアップデートしていただければ幸いです。