リモートワークでの経費精算を効率化 デジタルツールで手間を削減する基本
はじめに:リモートワークで変わる経費精算
パンデミック以降、多くの企業でリモートワークが導入され、働く場所や方法は大きく変化しました。この変化は、日々の業務、特に経費精算のような管理業務にも影響を与えています。
これまでの紙の申請書や領収書を使った経費精算は、リモートワーク環境ではスムーズに進まない場面が増えています。例えば、
- 領収書を提出するために出社する必要がある
- 承認者が不在で、承認プロセスが遅延する
- 申請状況や承認状況が見えにくい
といった課題が発生しています。このような課題を解決し、リモートワークでも効率的に経費精算を行うために、デジタルツールの活用が注目されています。
この記事では、デジタルツールを使った経費精算の基本と、その導入によってどのようなメリットが得られるのかを、デジタルツールに不慣れな方にも分かりやすく解説します。
経費精算のデジタル化とは
経費精算のデジタル化とは、これまで紙で行っていた経費の申請、承認、処理といった一連のプロセスを、専用のソフトウェアやクラウドサービスを使って電子的に行うことです。
具体的には、以下のようなことが可能になります。
- 申請者がパソコンやスマートフォンから経費申請を入力する: いつでもどこからでも申請書を作成できます。
- 領収書をスマートフォンで撮影し、画像データとして添付する: 紙の領収書を物理的に提出する必要がなくなります。
- 承認者がオンライン上で申請内容を確認し、承認または差し戻しを行う: オフィスにいなくても承認作業ができます。
- 経費データの集計や、会計システムへの連携を自動化する: 経理部門の手作業を削減できます。
これらの機能により、経費精算にかかる時間や手間を大幅に削減し、業務の効率化を実現することができます。
経費精算デジタル化のメリット
経費精算をデジタル化することで、関係者それぞれに多くのメリットが生まれます。
申請者にとってのメリット
- いつでもどこでも申請可能: リモートワーク中や出張先からでも、場所を選ばずに申請できます。
- 申請作業の効率化: 申請書作成がシステム上でガイドされ、入力ミスを減らせます。過去の申請履歴を参照することも容易です。
- 領収書の管理が楽になる: 領収書を画像で保存できるため、紛失のリスクが減り、保管場所も不要になります。
承認者にとってのメリット
- 承認作業の迅速化: 承認依頼がシステム上で通知され、内容確認と承認をオンラインで完結できます。
- 申請状況の見える化: 現在どの申請が自分の承認待ちなのか、全体の承認状況はどうなっているのかを把握しやすくなります。
- 不正防止・ガバナンス強化: 規定に基づいたチェック機能や、申請履歴の追跡が容易になり、内部統制の強化につながります。
経理担当者にとってのメリット
- 集計作業の効率化: 申請データが自動で集計され、手作業による計算や入力が不要になります。
- 会計システム連携: 多くの経費精算ツールは、既存の会計システムと連携可能です。これにより、経費データをそのまま会計システムに取り込むことができ、二重入力の手間を削減します。
- ペーパーレス化: 紙の領収書や申請書を扱う量が減り、保管スペースや管理コストを削減できます。
経費精算デジタル化ツールの基本的な機能
経費精算デジタル化ツールには様々な種類がありますが、共通して備えている基本的な機能をご紹介します。
- 経費申請機能: 交通費、交際費、出張費など、費目に応じた申請書をシステム上で作成・提出する機能です。スマートフォンからの入力に対応しているツールも多いです。
- 領収書添付機能: 領収書をスキャンしたり、スマートフォンのカメラで撮影した画像を申請データに添付する機能です。
- 承認ワークフロー機能: 申請された経費について、設定された承認ルートに従って自動的に承認依頼が回る機能です。承認者による承認、差し戻し、却下などがシステム上で行われます。
- 規定チェック機能: あらかじめ設定した会社の経費規程に基づき、申請内容に不正や不備がないかを自動的にチェックする機能です。
- データ集計・分析機能: 申請された経費データを集計し、レポートを作成したり、経費の利用状況を分析したりする機能です。
- 会計システム連携機能: 経費データをCSVファイルなどで出力したり、API連携によって直接会計システムに取り込んだりする機能です。
これらの機能を活用することで、経費精算業務の全体的な流れを効率化し、ヒューマンエラーのリスクを低減できます。
デジタル化導入へのステップ
経費精算のデジタル化を進めるための一般的なステップをご紹介します。
ステップ1:現状の課題整理とゴールの設定
まず、現在の紙ベースの経費精算プロセスにおける課題(例: 承認に時間がかかる、領収書の管理が大変、集計ミスが多いなど)を具体的に洗い出します。その上で、デジタル化によって何を達成したいのか、どのような状態を目指すのか(例: 申請・承認を全てオンライン化する、経理部門の集計作業時間を〇%削減するなど)を明確にします。
ステップ2:ツールの情報収集と選定
市場には様々な経費精算ツールがあります。自社の規模や予算、必要な機能、既存システム(会計システムなど)との連携の可否などを考慮して、複数のツールを比較検討します。無料トライアルを利用して、実際に操作感を試してみることも有効です。
ステップ3:導入準備と設定
選定したツールを契約し、利用を開始するための準備を行います。会社の経費規程をツールに設定したり、承認ルートをシステム上に構築したりします。必要に応じて、既存の会計システムなどとの連携設定も行います。
ステップ4:従業員への周知と操作説明
ツールを導入するにあたり、従業員全員が問題なく利用できるよう、利用方法に関する説明会を実施したり、マニュアルを配布したりします。特に、スマートフォンの操作や画像添付など、これまで慣れていない操作については丁寧な説明が必要です。
ステップ5:運用開始と効果測定
実際に運用を開始し、問題が発生した場合はサポート体制を整えて対応します。運用状況を見ながら、ステップ1で設定したゴールが達成できているか、効果測定を行います。必要に応じて、設定の見直しや改善を行います。
デジタル化導入時の注意点
経費精算のデジタル化を進める際には、いくつか注意しておきたい点があります。
- セキュリティ対策: 従業員の個人情報や会社の経費情報など、機密性の高い情報を取り扱うため、ツールが十分なセキュリティ対策を講じているか確認が必要です。アクセス制限やデータの暗号化などが適切に行われているかを確認しましょう。
- 法制度への対応: 電子帳簿保存法など、領収書や帳票の電子保存に関する法制度にツールが対応しているかを確認してください。
- 従業員への丁寧なサポート: 特にデジタルツールに不慣れな従業員に対しては、操作方法に関する問い合わせ窓口を設けるなど、手厚いサポート体制が重要です。
まとめ
リモートワークが普及した現代において、経費精算業務のデジタル化は、業務効率化と生産性向上を実現するための重要なステップとなります。紙の申請書や領収書から解放され、いつでもどこでも申請・承認が可能になることで、申請者、承認者、経理担当者全ての負担が軽減されます。
初めは新しいツールへの導入に不安を感じるかもしれませんが、この記事でご紹介した基本的な機能や導入ステップをご参考に、できるところから取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。デジタル化によって、リモートワーク環境での経費精算業務をよりスムーズに進めることができるでしょう。