リモートワークでの社内問い合わせ対応を効率化 よくある質問(FAQ)のデジタル化の始め方
リモートワークが普及し、働く場所が多様化する中で、従業員からの社内に関する問い合わせの対応に課題を感じている担当者の方もいらっしゃるかもしれません。オフィスにいれば気軽に聞けたことも、離れて働く環境では、質問のハードルが上がったり、逆に質問が増えたりすることがあります。特に総務部門など、様々な問い合わせが集まる部署では、対応負荷が増加しているケースも見受けられます。
本記事では、このようなリモートワーク環境下での社内問い合わせ対応の課題を解決するための一歩として、「よくある質問(FAQ)」をデジタル化し、従業員が自分で情報を探しやすくする方法をご紹介します。デジタルツールの利用経験が少ない方にも分かりやすいように、基本的な考え方からステップまでを解説いたします。
リモートワークで社内FAQのデジタル化が必要な理由
対面でのコミュニケーションが減るリモートワーク環境では、従業員が知りたい情報を得るために、担当者にチャットやメールで問い合わせることが多くなります。その結果、担当者は個別の問い合わせ対応に多くの時間を取られ、本来注力すべき業務に集中できないという状況が発生しやすくなります。
よくある質問とその回答を一つにまとめてデジタル化しておくことで、従業員は担当者に問い合わせる前に自分で情報を探すことができます。これにより、問い合わせる側は素早く疑問を解消でき、対応する側は同じ内容の問い合わせに何度も答える手間を省くことができるのです。これは、双方にとって大きな効率化につながります。
社内FAQデジタル化で得られるメリット
社内FAQをデジタル化することには、主に以下のようなメリットがあります。
- 従業員の自己解決促進: 従業員はいつでもどこでも、自分で必要な情報を探して疑問を解消できます。担当者の応答を待つ必要がありません。
- 問い合わせ対応負荷の軽減: 同じ質問への対応回数が減り、担当者の業務効率が向上します。より複雑な、個別の対応が必要な問い合わせに集中できるようになります。
- 情報の一元化と共有: 社内の様々なルールや手続きに関する情報が一箇所に集約され、組織全体で共有しやすくなります。情報が属人化するのを防ぎ、新入社員のオンボーディング(組織への適応支援)にも役立ちます。
- 情報の更新と管理の容易さ: デジタル化されていれば、情報の修正や追加が簡単に行えます。常に最新の情報を提供することができます。
社内FAQをデジタル化する基本的なステップ
それでは、実際に社内FAQをデジタル化するための基本的なステップをご紹介します。特別なツールを用意しなくても、今使っているツールで始められる方法もありますのでご安心ください。
ステップ1:よくある質問を洗い出す
まずは、どのような質問が多いのかを把握することから始めます。
- 過去の問い合わせ履歴(メール、チャット、電話メモなど)を振り返る。
- 従業員に簡単なアンケートを実施し、よく分からないことや知りたいことを尋ねる。
- 各部署の担当者にヒアリングし、頻繁に聞かれる質問をリストアップしてもらう。
このステップで、具体的な質問項目とその量が把握できます。
ステップ2:質問への回答を作成・整理する
洗い出した質問に対し、分かりやすく正確な回答を作成します。
- 回答は簡潔に、専門用語は避けるか、簡単な言葉で補足説明を加えます。
- 必要に応じて、関連する規定や手続き、担当部署へのリンクなども含めます。
- 同じような質問はまとめ、カテゴリ分けを検討します(例:「労務・手続き」「IT・システム」「オフィス関連」など)。
この段階で、後でデジタルツールに移行しやすいように、WordやExcelなどのファイルに質問と回答を整理しておくと良いでしょう。
ステップ3:利用するツールを選ぶ
社内FAQをデジタル化するためのツールは様々ですが、初心者の方が始めやすいものとしては、以下のような選択肢があります。
- 既存のドキュメント共有ツール/社内Wiki: Google Drive、Microsoft SharePoint、Confluenceなど、既に会社で導入しているツールにFAQ用のドキュメントやページを作成する方法です。追加コストがかからず、使い慣れた操作感で始められる利点があります。
- 簡単なクラウドサービス: FAQ作成に特化した比較的安価な、あるいは無料プランがあるクラウドサービスもあります。テンプレートが用意されているなど、FAQ形式に整えやすい機能があります。
- 社内ポータルの機能: 既に社内ポータルサイトがある場合、そこにFAQセクションを追加できる場合があります。
最初は多機能な専用ツールにこだわる必要はありません。まずは、従業員がアクセスしやすく、情報を整理・更新しやすいツールを選ぶことが重要です。既存のツールで始めるのが、最もハードルが低い方法の一つと言えます。
ステップ4:ツールを使ってFAQを作成・公開する
ステップ2で作成した質問と回答を、選んだツールに入力していきます。
- ドキュメント共有ツールの場合: 一つのドキュメント内に質問と回答をリスト形式でまとめ、見出し機能を活用して目次を作成すると、探しやすくなります。カテゴリごとに別のドキュメントを作成し、フォルダで整理する方法もあります。
- 社内Wiki/ポータルの場合: 専用のページを作成し、Q&A形式で情報を記述します。見出しやリンク機能を活用して、関連情報への導線を整備します。
情報を入力・整理したら、従業員がアクセスできる場所に公開します。アクセス権限の設定を適切に行い、社内関係者のみが閲覧できるように注意してください。
ステ5:従業員への周知と運用・改善
FAQを公開したら、従業員にその存在とアクセス方法を周知します。社内メール、チャット、掲示板などを活用してください。
公開後も、問い合わせ内容の変化に合わせてFAQの内容を定期的に見直し、更新することが重要です。従業員からのフィードバックを収集し、分かりにくい点や不足している情報を改善していくことで、より使いやすいFAQへと育てていくことができます。
セキュリティへの配慮
社内FAQには、会社の規定や手続きに関する情報が含まれるため、情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
- アクセス制限: 社内関係者のみが閲覧できるよう、ツールやフォルダのアクセス権限を適切に設定します。
- 情報管理: 機密情報や個人情報など、公開すべきでない内容は含めないようにします。
- ツール選定: 利用するツールのセキュリティ対策(データの暗号化など)についても確認しておくと安心です。
まとめ
リモートワーク環境における社内問い合わせ対応の効率化は、総務部門だけでなく、従業員全体の生産性向上にも繋がる重要な課題です。よくある質問(FAQ)のデジタル化は、その課題を解決するための効果的な一歩となります。
特別なシステムを導入しなくても、既存のドキュメント共有ツールなどを活用することで、手軽に始めることができます。まずは、よくある質問を洗い出し、回答を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。一歩ずつデジタル化を進めることで、問い合わせ対応の負荷を減らし、リモートワークでの働き方をよりスムーズにすることができるでしょう。