契約業務をデジタル化 電子契約の仕組みとメリットを分かりやすく解説
リモートワーク時代の契約業務の課題
パンデミック以降、多くの企業でリモートワークが導入されました。これにより、従業員は場所を選ばずに働けるようになりましたが、一方で従来の業務プロセス、特に紙媒体でのやり取りを前提とした業務において、さまざまな課題が顕在化しています。
契約業務はその典型と言えるでしょう。契約書の作成、内容確認、押印、郵送、そして受け取った契約書の保管といった一連のプロセスは、しばしば出社を必要としました。急な契約締結が必要な場合や、取引先が多い場合、これらの手続きがボトルネックとなり、業務の遅延を招くことも少なくありません。また、紙の契約書は紛失や破損のリスクもあり、過去の契約書を探す手間もかかります。
このような課題を解決する手段として、「電子契約」が注目されています。デジタルツールに不慣れな方でも理解できるよう、電子契約の基本的な仕組みやメリットについて解説いたします。
電子契約とは何か
電子契約とは、紙の書類ではなく、電子ファイル（PDFなどが一般的です）を用いて行う契約締結の方法です。契約の内容が記載された電子ファイルに、「電子署名」を行い、その真正性（確かに本人が署名したこと）と非改ざん性（署名後に内容が変更されていないこと）を証明することで、紙の契約書への押印と同等の効力を持たせます。
この電子署名は、単に電子ファイルに印影の画像を貼り付けることとは異なります。高度な暗号技術などを用いて、誰が、いつその電子ファイルに署名したのかを特定し、かつ署名後にファイルの内容が変更されていないことを技術的に証明する仕組みです。
電子契約を導入するメリット
電子契約には、リモートワーク環境下での課題解決に繋がる多くのメリットがあります。
業務効率の向上
最大のメリットは、契約締結にかかる時間と手間を大幅に削減できることです。契約書の送信、内容確認、署名、返送といった一連の流れをオンラインで行えるため、物理的な距離に依存せず、迅速に手続きを進めることができます。これにより、契約締結までのリードタイムが短縮され、ビジネスチャンスを逃すリスクを減らすことにも繋がります。
コスト削減
紙の契約書に必要な印刷代、郵送代、収入印紙代といった費用を削減できます。特に収入印紙は契約金額に応じて高額になる場合があるため、大きなコスト削減効果が期待できます。また、契約書の保管場所にかかるコストや、保管スペースの有効活用にも繋がります。
利便性と検索性の向上
インターネット環境があれば場所を選ばずに契約手続きを行えるため、リモートワークや出張中でも業務が滞りません。また、電子ファイルとして契約書を管理することで、特定の契約書を探す際にファイル名や内容で検索することが可能になり、必要な情報を素早く見つけ出すことができます。
セキュリティとコンプライアンスの強化
電子契約サービスを利用することで、契約書の改ざん防止やアクセス制限といったセキュリティ対策が講じやすくなります。また、契約締結のログ（記録）が自動的に残るため、誰がいつ契約に同意したかの履歴を追跡しやすくなり、内部統制やコンプライアンス強化にも貢献します。
電子契約の安全性について
紙の契約書に慣れている方にとって、「電子ファイルだけで本当に安全なのか」「法的な効力はあるのか」といった点は気になることでしょう。電子契約の安全性と法的有効性は、主に以下の仕組みによって担保されています。
法的有効性
日本においては「電子署名法」という法律があり、この法律に則って行われた電子署名には、紙の文書における押印や署名と同等の推定効力が認められています。これにより、電子契約の法的な正当性が担保されています。
電子署名とタイムスタンプ
電子契約では、契約書ファイルに対して「電子署名」を行います。これは、紙の契約書における署名や押印に相当するもので、契約を締結した当事者が誰であるかを証明します。さらに、「タイムスタンプ」を付与することで、その時刻に確かにその電子ファイルが存在しており、それ以降改ざんされていないことを証明します。これらの技術的な仕組みによって、電子契約の信頼性が確保されています。
電子契約導入にあたっての検討事項
電子契約の導入は多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかの検討事項があります。
社内体制とルールの整備
電子契約を導入する際は、これまでの紙での契約フローから変更が必要になります。関係部署（法務部、経理部、営業部など）との連携を取り、電子契約に適した新しい業務フローやルールを整備することが重要です。
取引先の理解
すべての取引先が電子契約に対応しているとは限りません。電子契約導入のメリットや安全性について丁寧に説明し、理解と協力を得ていく取り組みが必要となる場合があります。段階的に、対応可能な取引先から電子契約に切り替えていくという方法も考えられます。
ツール選び
さまざまな電子契約サービスが提供されています。自社の業務内容や必要な機能、想定される利用頻度、コストなどを考慮し、使いやすさやセキュリティレベルを確認しながら、自社に適したツールを選ぶことが大切です。無料トライアルを提供しているサービスもあるため、実際に試してみるのも良いでしょう。
まとめ
電子契約は、リモートワークが進む現代において、契約業務の効率化、コスト削減、利便性向上、そしてセキュリティ強化を実現するための有効な手段です。紙の契約書から電子契約への移行には、社内調整や取引先の理解が必要となる場合もありますが、そのメリットは大きいと言えます。
まずは、電子契約に関する情報収集を進め、自社の契約業務においてどのような部分で効果が見込めるかを検討してみてはいかがでしょうか。新しいツールへの一歩は勇気がいるものですが、その先に業務のアップデートがあるはずです。